庭に花の苗を植えるのに、何度も園芸店を行き来していました。
自宅からほど近いその園芸店は、苗も自ら栽培していて、裏に大きな敷地を携えています。
今はビオラの最盛期で、その敷地は遠くからも色とりどりで奇麗に見えるほどです。奥にはハウスもあって、次ぎの出荷を待つシクラメンが青々と茂っている様子がうかがえ、ワクワクさせられます。
そこでのエピソードから。
そこの家主なのか?雇われ従業員なのか?いつも店番をしてる2人のお兄さんがいます。
何故か私には白雪姫に出てくる7人の小人に見えてしまい(2人だけですが)、不思議な存在でした。
いつも同じ汚れてよれっとした作業服で立っています。これがまたコスチュームの様に感じるのかも知れませんが、商売なのにあまり愛想は良くないし、不用意にお客様に話しかけたりはしない実に大人しい2人でした。
それでも花の質問をすれば、いつも的確に応えてくれて、私はとても助かっていました。
そんなある日 店に入ろうとすると、すごい剣幕で怒鳴りながら店から出てくる中年夫婦とすれ違いました。
なにやら気に入らない事があった様で、旦那さんは火を吹くばかりに怒っているのです。
「あんな馬鹿もんに、何が分かるかぁー!!」そんな内容を、それこそ他の人に聞こえんばかりに幾度も叫んでいるんです。奥さんはオロオロとして人目を気にし、その雰囲気からするとどちらかと言うと怒っている旦那さんの方が分は悪そうでした。
案の定 店の中を見ると、レジ前に人だかりがあって、お兄さんが1人しかおらず、あたふたとその対応に追われています。きっと話しかけたけれど「今は無理」ぐらいの味気ない返事をされ、旦那さんは切れちゃったというのが関の山と思いました。まーそのくらい木訥(ボクトツ)とした彼らですから、商売人としてはやれやれと思いました。
それから数日して、たまたま通りかかったリビングのTVに、なんとその園芸店のお兄さんが出ているを見つけました。本当に偶然、それもNHK!(笑)。これはすごいアンビリーバボーでした!
なんでも不思議な朝顔を育てている第一人者だそうで、そうそうたるメンバーと一緒に映って居たようです。それでもいつもの汚れた作業のまま、いつものようにぼそぼそと話していました。
ちらっと観ただけで内容がほとんどつかめませんでしたが、とにかく「ただもんじゃない」事だけを認識したのでした。
それからまたしばらくして、たまたま他にお客様も居なかったので「TVに出てましたね?」っと話しかけてみる事にしました。
するとなんとも照れくさそうに笑い「自分は学者でもないし博士号を持っている訳でもないから、辞退したんだけどね、、」と、そのいきさつ等を話してくれました。そして本当に珍しく流暢に、朝顔の話をしてくれました。
話しの中には、孔子の言葉などを用いて説明を加えたり、その話しの面白ったらありませんでした。
驚きました。
いつも言葉数は少ない彼でしたから、こんなに惹き付けられるような話しをするとは予想もしていませんでした。その上教養の深さって言うのでしょうか〜物事を慎重にじっくり考えている様を感じましたし、黙っているからって何も考えていないとか、そんなのでない事は明確に判りますし、人間性が深いって言うのか、とにかく人間としての面白みみたいな事まですごく伝わって来るのです。
その瞬間にまるで彼を「クズだ」ぐらいに言っていた、あの旦那さんを思い出しました。
あ〜TVを観ていたら良かったのに〜そんな事を思い、「本当の彼はね〜」って言ってやりたい衝動にまで私は駆られました。
けれども、彼らはお構え無し、いつもと同じで、いつも通りの仕事をしていました。
おごり高ぶるところもない訳です。
つくづく人を外見など1面だけで判断したり、安易に見下したり軽んじてはいけないと思い、我が事のように反省していました。
そんな事を思いながら昨日は庭仕事をしてたのですがね、夜になり天皇即位の祝賀のご様子をニュースを観た時に、そこで皇后様が「年老いた方の問題ばかりが取りざたされるけれど、年を重ねた方を寿いで欲しい」との言葉を話されました。
(寿ぐ:コトホグ=祝う喜ぶの意味です。)
とてもいい言葉で胸を打たれました。
「見方を換えて接して欲しい」とのお気持ちが、津々と伝わったのです。
本当にもっともっと、人は優しくなって生きて行かなければいけないなっと思いました。
そして、ふと気がつくと、心が癒えていました。
また明日から楽しく庭仕事が出来ると思いました。