桜が咲くと年が明けたような感覚を覚えます。
特に昨日は、卒業を迎える者が2名おり、閉店後に全スタッフが集まっての卒業式になりました。
親しんだスタッフを見送るのは、いつであっても寂しいものですね。
卒業後の進路は色々です。
Zopfの場合 独立開業に向けて動く者が多いですが、必ずしもではありません。でもどの道に進もうと、前向きに 元気に! 堂々とこの卒業を迎える事が、私は1番だと思っています。
数年前、突然辞めたいと私の元に駆け込んで来た者がおりました。
聞けば彼氏の急な海外出張へ付いて行きたいと言うのです。時期は秋。やっと暑い夏が終って繁忙の時期を迎える頃でした。ほんの数日前まで熱心に仕事について語り合ったばかりだったので、私も驚いて「せめて年末が終るまで待てないかな?」と口走ってしまいました。すると恋敵でも見るように「嫌です!」と泣いてしまったのです。ヤレヤレと思い 諭そうかとも考えましたが、30才を過ぎた女の子だったこともあり、嫁に行くのも時期相応かと母心が動き 即OKをしました。
その後の現場はシフトが乱れ、後始末に大変な思いをしたのは言うまでもありません。残されたスタッフは、とても大変だったでしょう。
でも誰も不平不満を言いませんでした。
それには、実はこんな裏話があったからでした。
辞める際に「辞める理由を一切他のスタッフに言わないで欲しい」私は頼みました。
彼女も理解し、消えるように辞めて行きました。
そう卒業式はありません。
以来どうなったかを知る者も居ませんし、私も何も言わず、今日まで この件を黙り通しました。
人は欲張りだし不安になりやすいものです。いい伴侶にも巡り会いたいし〜もっと自分に合う仕事があるんじゃなかろうか?こんな人生でいいのか?疑問を持ってしまうんですよね。その時に、愛に走った彼女を羨ましく、残された自分を惨めに感じてもらいたくなかった。
未来に不安を感じさせてはいけない、私はそう思ったのです。パン屋の修業時代は辛く厳しい事が多いものだから。
そして「急に辞める」という、社会人としてやってはいけない事を、美談にして欲しくなかった。人に迷惑をかけても良い理由など絶対に無いという、モラルを守りたかったんです。
価値観も意識も多様化して「何でも良かれ」な時代になって来ました。確かに自由に生きる人には、それでもいいでしょう。
でもパン屋でやって行くには、『普通の感覚』のバランスが如何に大切かを、私はパン屋で生きて来て切実に感じています。失ってはダメなのです。
以前にも話した、履歴書にアヒル口の写真を貼った者のように、『普通の感覚』が解らない者には、残念ながら務まらないものなのです。
卒業の日まで、きちんと勤め上げた2人を私は素晴らしいと思いました。
もちろん祝福に集まったスタッフも同様に、敬意の念を抱いたでしょう。
だからこそ、次ぎのステップを踏み込めるんです。さらに大きく育って行ってくれるでしょう。
卒業おめでとう!
昨日は「あばよ」しか言いませんでしたが(笑)また会う日を楽しみにしています。
写真は市川/ル・ポワゾン