TVのドラマで見かける手術光景は、医師が「メス」と言うと看護婦がペシってメスを渡す場面でしょう。
すると、あのメスでお腹を切り裂くんだな~と、気味悪く感じてしまうので、それから先はNG(笑)。どんな風に手術が進められるかなど、ご存知ない方がほとんどだと思います。
私は看護婦に成ってすぐ、社会人としての第1歩を手術室勤務の看護婦として迎えました。
だから本当の手術、そう...その先を私は知っています(笑)
気味が悪いかもしれませんが、ちょっとお話しますとね、実際はメスで切るのは表面の固い皮膚だけで、あとはハサミみたいな道具やら巨大なピンセットやら、それはもう様々な器具を使って進められるものなんですよ。メスは最初の一瞬だけです。
その後は膨大な器械類で進められるんです。精密さが要求される手術になれば、顕微鏡だって使いますからね。器械/器具の数は、数千 数万にもおよぶのだと思います。
ある意味、病棟の看護婦さんは患者さんと言葉を交わす優しいイメージでしょうが、手術場の看護婦はそれらの器械を操る器械屋さんのイメージなのかも知れません。
器械類は、名前をコッヘル/ペアン/メッツエン/ゾンデと全く聞き慣れないものばかり。
チンプンカンプンでしょう?
でも手術場に勤務をするには、器具の名前を覚えるのはもちろん、用途を覚え、手術にあわせ100本200本と用意をしなければなりませんでした。大きな手術になれば、その数は1000を越える事もありました。
そして、手術現場にも立ち合います。
メスを渡したりする役目も看護婦の仕事です。
TVドラマではイケメン医師が華麗に手術を披露する様子がそりゃ〜美しく描かれますが、現場はもっとピリピリとしています。あんなに優しく「メス」なんて言ってくれる医師ばかりじゃあありませんよ(笑)ただ手だけ出されて「次!」なんて要求をされたりもしちゃいます。慌てて間違った器具を渡した時には〜「違うだろー!」と投げつけられることもあるぐらい....(T.T)
新人の頃は、そりゃ〜毎日どれほど泣いたものでしょう。
けれども、それは決して医師が意地悪なのではなく、手術は集中して行われるものだからです。タイミングや流れ(スピード)が大切で、ちょっとのロスタイムが大出血に繋がったりもし兼ねないのです。
当然の要求なんですよ。
て、なると場面場面で的確な器具をタイミングよく渡して行くには、看護婦でも医師と同じ様に手術の技法を知っている必要に迫ら、看護婦の資格を取って晴れて現場に立ったものの、本当の勉強はここからだったことを思い出します。
猛勉強しましたよ。
で。
手術場の最大の役割として、手術終了時に手術で使った器具やガーゼといった道具類をカウントする役目が看護婦にあって、吹き出す血液をぬぐう為に使われるカーゼも、大きな手術になれば相当な数で、それを1枚1枚数えるのです。
それは、当然ながらお腹の中に器具類を残してしまわないようにする為です。
1000本を越える器具を間違いなく数えあげるのは、それはもう すごい集中力も必要ですし、手術が始ってから一瞬たりとも目を離さず行方を追って行く必要もあって、そのカウントが(看護婦としての)山場でもありました。
それが、かなりの心労だったのでしょうね、その頃 夜な夜な寝言で「1枚〜2枚〜」とつぶやいたり、手をブラシで勢いよく洗う仕草をしていたそうです(笑)。(本人に意識はありません!)
それを見たデブ様が「仕事がそんなに辛いのなら辞めてもいいよ」と言ったほどでした。
けれども、
当時の私は全くそれは苦ではありませんでした。
それこそが『出来る看護婦の見せ場』でしたし(笑)、すすんで大きな手術にも望みました。
滞ることなく手術が円滑に終えられた時の達成感は、それはそれは爽快なものでしたから。仕事の面白さ、楽しさを存分に感じていた瞬間だったと思い出されます。
さて〜
こんな昔話を自慢げに持ち出してきて、今頃 何が言いたいかと申しますとさ。
年寄りのお決まりの小言ですがー(笑)
=最近のZOPFの新人達に物を申したい!=
ZOPFには確かに他の店の数倍以上のパンがありますがね、その値段を1ヶ月経っても〜2ヶ月経っても〜〜〜
「覚えられません」と言うのはいかがもんでしょう?
その顔は「300もあるんだから当然でしょう」と言わんばかりです。
本当は私は呆れてしまいます。
私はねこの看護婦時代の経験があるので甘えだと思えてならないんですよ。悪いけれど。1晩で1000本の器具を覚えた経験もあるし、この事実は『人間って必死になったら、結構〜出来るもんなんだ』という証明だと思うんですよ。
だって私、たいして頭良くないよ!
ここも、言いたい。(笑)
パン屋には、自分の不手際で人を殺してしまうかもしれないという恐怖感や自分が人の命を預かっていると言うまでの必死さはないかもせれない。だからって、使命感や責任感まで芽生えないというのもどうなんでしょう?
子供っぽい大人が増えている昨今、大人に成った自覚や仕事への責任感は、どうやったら成長するのでしょうね。
本気で問いたいよ。
私だって無茶を言わず黙って見守って来ましたさ。
譲歩もしてきました。でもですよ、値段1つも覚える努力もしていない現実は許し難いと思うのですよ!!
昔懐かしい単語帳でも作って努力してみたらどうなのさ〜?
それすらもしないで自然に任せて覚えるのを待つのか?そんなに君は天才なのか??
見兼ねて先日、私が『価格一覧表』を作成してあげたんですよ。テスト形式のものをね。
渡された新人は「げ〜〜〜テストかよー」って顔していたみたいですが....
おいおいおい ( ̄ロ ̄;)
そしたら、
さらには、この一覧を「コピーを下さい」と、ニコニコやって来て.....
は〜〜〜? ( ̄□ ̄;)!!
コピーぐらい自分でやるべきだし、自腹でコンビニでも走って行ってやって来るもんだろう???
★どこまで依存しているのやら....orz
労働者に優しい労務士の先生だって「パンの値段を覚えないのは職務怠慢」「言語道断」と言い切って下さる。
すなわち、労働側もこのくらいの努力はして当然なんですって。
ここ解ってないんだと思う!
最近は「無理はしたくない」者が増えました。
「ありのままで〜」が大好きなんですよ。本気でね。
だから無理を要求すれば、強いられているとすぐに騒ぎ出すし、それを怒れば被害者意識で「もう無理、心が折れた」と言い出す有り様。
無理も努力もしないで「ありのままの自分で働ける職場こそが良い職場」と言わんばかりの最近の姿勢はマジなげかわしい!
じゃあ、ありのままのあなたはプロなんですか?つー事を聞きたい。そんな要求を飲んでいたら、プロのパン屋は無くなっちゃいますよ。
意味解らん!!!
パン屋を目指す者達がいる。
パンの作り方を教え欲しいと私達はせがまれるけれど、努力を惜しむ者にどうやって教えたら良いんだろう。無理せず覚えるスピードに合わせていたら、100年あっても足らないと思うね。最近とみに思うわね。。
ZOPFの300種類のパン。
あなたが覚えたいのは値段だけでなく、もーっとその先。味だし作り方じゃないのだろうか?
1歩目で難色を示す者に、その先をなぜ私達が飴を持って教えなければいけないのか?疑問でならない。
覚えるのは、あ な た だし、教えないから覚えられないのではなく、覚えてくれないから教えられないのよ。