某有名ファーストフード店でアルバイトを始めた長男。
サッカー馬鹿で不器用で、身の回りの事だってまともに出来ない上、初めてのバイトだから、非常にその行方を心配していた。ましてやスピードが求められる業務だろうから、数日で怒鳴られ首にされるのではないかと、家族はヒヤヒヤしていたのだった。
ところが、そんな甘ちゃんの長男でも、どうやら勤まったようで〜毎日元気に出かけて行くでは無いか〜。朝5時から目覚ましが鳴り響いたと思えば、「朝マッ○作って参りま〜す」とご機嫌でお出かけだ。
やれやれとホッとしつつ、いや〜天下のマッ○様は、やはり偉大な〜と思う事しきりだった。身の回りの整理整頓は愚か、包丁もハサミすら持てない若者でも雇って下さるのだから、親としては感謝しきりである。。ありがたやありがたや。。。
数日が経ち、だいぶ慣れてきた長男にその働きぶりを聞くと、作業はとても簡潔で分かりやすく、全てにマニュアルがあって、それさえ覚えてしまえば出来るのだと言う。約3日で製造の仕事は、覚えきれたと豪語する有様。
おいおい、ちょっと仕事をなめてもらっちゃ困るな〜などと思ったが、こんな話が飛び出した。例えば、ハンバーガーなどを作る時間が決められていてるのは、皆さんも知っているところだろうが、肉を何十秒加熱するとか、パンは何分焼くとかそんな基本的な作業時間の他に、全体を仕上げる合計の時間も決まっているのだと言う。すなわち「ハンバーガーを完成させる能力を時間で表示」してあると言うのだ。
これは面白い!
平均的な能力の人で作れる時間。
ベストの時間。
腕を磨くと出来る様になる時間。など、全て詳細に明記されているのだと言う。
(そう言えば、マッ○にはハンバーガーの製造コンテストなんて言うのがあると聞く。美しくそして完璧に作れるか競うらしい。)
自分がその能力に見合っているのか、劣っているのかも判断が出来るし、決められた時間で作ろうと、かなりの無頓着でない限り努力をする事だろうから。
ほっほーーーーー!!!
さすが効率と合理性を追求する国のお店だ、素晴らしい。それだけに留まらず、スタッフの志気を高める方法も解っているのだ。
非常に感心した。
しかし、これは商売だからね〜パン屋だって同じで、常日頃私たちも似たような事をZOPFで口にする事がある。
先日もあんこ詰めの作業が、もんもんと続いていた時の事だ。
(注:ZOPFでは1日に6000個以上のパンを作ります。もちろん全て手作りで、あんパンだけでも1000個を超えます)「いつかは終わるだろう*」と言った感じのムードがスタッフ間に流れていた。なんとなくだら〜っとあんパン詰めの作業が行われていたのだった。まあ、四六時中恐い顔をして、あくせく仕事をしていろとは言わないけれど、まだ配置換えをして間もないスタッフだけは、あんこを包む先輩たちの手技を真似しよう〜追いつこうと、焦って作業していてもいいはずなのに、先輩に混ざって〜マイペースであんこを詰めていたのにカチンと来てしまったのだ。
(注:だってねもう若くもないそのスタッフは、最近子供も生まれたので、私はもっと父親として頑張ってもらいたいのよ〜子供なんてあっという間に大きくなるからね。。。そんな矢先だった訳で)
店長は、壁に張り紙を貼った。
「あんこ詰め=3分で24個。合格ラインは5分で24個」
それを見て、スタッフはぎょっとした顔をした。
なんとえげつないと思ったスタッフも居たかもしれない、しかしこれほど分かりやすく的確に、自分の能力を判断できる指標を示してもらえて、私は嬉しいと思って欲しいものだと厳しく言い放ったみた。
「パン屋に成りたい」とZOPFを訪れる者は、ありがたい事に少なくなく、現在ZOPFで働くスタッフのすべてが、将来何らかの形で開業を夢見ている。
私はこの全てのスタッフが、パン屋に成れる事を願っている。それも〜出来れば、ボチボチ売れればいいとか、暮らして行ければいい。。。なんてパン屋ではなく、例え一時でも〜大いに売れ、人生よかった〜*っと楽しめるパン屋に成って欲しいと思っているのだ。無論そんな事は容易ではなく、開業できる者は、このうちの数割だろうし、中にはつぶれるパン屋も出るだろう、、、成功する者はもっともっと少ないのだろう。それが厳しいパン屋の現実だ。
だからこそ、18才のアルバイトから聞く話にも成功の鍵は見つけられるのだ!
常にアンテナを張り、自分を顧みなければいけないよね。
あんパン包みのひとつひとつが、大切なんだよ。
どうやったら身につけられるのか?一時も忘れる事無く、常に考えて行かなければいけないのだと思うんだよ。自分に厳しく、判断を繰り返そうよ、時間は無駄にしちゃ〜だめだよ。貴重な一時は、日常の中にあるんだって。
そして、いい手本はいつもあなたの目の前にうろうろしてるじゃないか?
店長のあんパン詰めは超〜〜〜早いよ!奇麗だしね!!
私はその為には、とことん意地悪ばあさんになってもいいと思ってる。
「ねえ?何分で出来る様になったの?」今日もスタッフに聞いて歩こう!