18才で家を出てからと言うもの、実家に帰るという習慣が全く無い私。
母にはいつもあきれかえられている。
先日、足の指をケガした母を見舞いに行かないのも心底恨まれるだろうと思い(笑)、ちょっくら実家に顔を出してみた。案の定「あら」と言わんばかりの母が居た。
たまには〜ご機嫌でも取ってやらねば〜〜と思い昼食に誘うと、寿司屋を指定しやがった。さすが私の母である。
>あ〜ハイハイご指名通りにどこへでも参りますよ。
近所の寿司屋に入った。
皿は回転していない昔ながらの寿司屋だったけれど、最近は安いお店が増えたせいか¥980でサラダと茶碗蒸しがついたチラシのランチが食べられる、すなわち良心価格のお店になってしまっていたのだった。
>ちょっと、ランクが低かったかな〜っヤバい★店の選択を誤ったか?
と母の顔色を見ると、母はもうすでにすました顔をしていた。(←セレブぶっている訳だぁw)
寿司屋の醍醐味はやっぱりカウンター、適当に握ってもらうのが江戸前の粋だ。
もちカウンター席に座った。
けれど、どーうも板前さん達の様子がおかしい。
これから大口の宴会があるらしく、その準備に追われて気もそぞろ、私たちの動向をまったく気にする様子もないのだ。どこかへ行ってしまう有様。
>参ったな〜上手にもてなしてくれよ〜
私は内心焦ってきた。自分だけなら気にもしないのだが、せっかく母を連れて来たんだから、気の利いた声がけと会話で〜ご機嫌に食事の時間を過ごさせて欲しかったのにーっ。他力当てにならずかぁ、、ますます焦ってきた。
「どれでも好きなの食べなよ〜」と明るくすすめると、「何があるのかよく分からないしな〜」と母。
>おいおいおい、寿司好きの父に連れられて、寿司屋には幾度と来た事があるだろう〜、今さら初ぶってもらっても〜参ってしまうよ〜。ネタなんてそうそう変わりやしないさ〜
「じゃあ、まず天ぷらの盛り合わせにする?」母が揚げ物好きなのは分かっているから、これからだ=!っとすすめてみた。すると母「カレイの唐揚げにする」ときた。
>って〜〜〜かーちゃん、ちゃんと分かってんじゃんか!?!
母は店の壁中に貼ってある張り紙を、もう読んでいたのだ。
>それに見えてんじゃんか!
「ハイ了解。カレイの唐揚げ〜」とカウンターから叫ぶ。
ところが、すぐにぶっきらぼうに奥の厨房から、「無いでーす」の返事が返って来た。
>は〜? 開店して2時間で、メニューが無いってどー言う事よ?
かなりカチンと来たが、せっかく楽しもうと来たのに〜たかがそんな事で怒るのも大人げない。それよか〜私は母のご機嫌を取るのに精一杯だった。
「じゃあ〜天ぷらで!!」と、元気に江戸前らしく威勢良く言い換えてみたっ☆
でも、板前さん達、どうも渋々。。。(やる気が感じられない)
そんな微妙な雰囲気が流れ〜〜母との会話も途切れさせてしまった。。。
>だからさ〜〜(T_T)のりが悪いのはダメだって。。。
その上、揚げ物はなかなか来なかった。
気を取り直し「違うのも頼もうか?」と明るく私。
すると「カルパチョって美味しいのよね〜」と母。その遠回しの言い方に、少しイラッとしつつ
>ハイハイ、喜んで〜
と注文すると、板前さん達の忙しさは頂点に達しており〜、目の前に居る板長さんは、横に居た他の板前さんに「カルパチョを作れ」と小声で指示をした。
するとその板前さん、普通の声で「え?!分からないっす(出来ないです)」と無下な返事を堂々と返しやがった。板長さんがむっとした。
>やりやがったな〜(T_T)
再び母との会話は途切れた。。空気が凍っている。。。
>頼むから〜どっかでやってくれよ〜そんな聞きたくないから。。(T_T)
しかし、あっぱれと思った。それでも手のはなせない板長は、ひたすらに小声で指示を飛ばし、カルパチョをその板前さんに作らせたのだ。
やっと食べ物がやって来た。でもなんだか不安。。。。
それでも「ま〜美味しそう」と、やっと母の喜ぶ顔が見れた。
>しかし=取って付けたみたい(T_T)
そして「でも2切れでたくさんね〜」と箸を置いてしまった。
>あわわわわ。。。口に合わないのか?!私は焦った。
ううううう、、、確かに鯛の切り身がにぎりのネタと同じ厚みだよ。。。。
すると、やっと天ぷらが登場! 熱々だ〜
「ま〜たくさん!」と母。笑っている。
>ヨッシャー!!よかった〜よかった〜〜食べてくれ〜〜
やっと、ほっとして私も天ぷらに箸を出そうとすると、天つゆが1つしか無い。
気が利かない。。。
これにはかなりむっと来た母がつかさず「もう1個頂戴ね〜」と催促したが、また今イチの反応で、どうもやる気が無い。。。
>おいおいおーーーーい 内心もうぐてんぐてんに凹んでしまっていた。
それでも、暖かいうちに〜と箸をすすめると、母の好きなキスの天ぷらが無いではないか?!
無い。無い。なーーい
あったのは母の嫌いな穴子。穴子だ〜〜
>違うから〜〜〜〜(T_T)
母はすぐに「もういらないわ」と箸を置いた。
私はひたすらに天ぷらを食べた。
再び気を取り直し、「握ってもらおうか〜」と言った。
すると、ひときわ大きく目立った紙に書かれた「極・にぎり」の文字に母の目が光る。
「何が入っているのかしらね〜?」とわざとらしい。。。。
そうか〜母は目の前に居る板長に聞こえがしに言っているのだ。そうだよね〜話しかけて欲しいよね〜。せっかくカウンター席に座っているんだからね。
でも、、、、、板長さんは気がつかない。気がつかない振りをしている。(としか考えられない(T_T)
私「ホントだね〜きっと凄いネタが入っているじゃない?面白いじゃない?!まず1皿頼んでみようよ!」と元気に言ってみた。もちろん試しに食べるような値段ではなかった。多分この店の最高のにぎりだから。それでもいい=それでこの場が繕えるなら。
>喰ってくれ〜極みだろうが〜極上だろうが、喰って喰って喰いまくってくれ〜〜〜〜必死だった。
しかし、にぎりもナカナカ来なかった。。。。。来るのはつまみばかりなり。。。
>(T_T)
その待ち時間、お茶をすすめるものも〜もううんざりしたし、あの話この話も色々したけれど、もう間が持たなくなっていた。。。
すると、今度は母の目が私の貴金属に光った。
そして「また買ったの?いいわね〜〜〜〜〜〜」と、思いっきりわざとらしいほどにうらやましがるではないか。
「あーこれ?安物だよ〜ダイヤじゃないから、ク リ ス タ ル!」と言ってみたが。
「でも〜一瞬見ただけじゃ分からないわよね〜」と続ける母。
「そうでしょ〜つけて本物に見えたら、私もの本物って感じ?」などと笑って、どうにかこの盛り沈んだ場を盛り上げようと、おどけてみた。
すると笑うどころか母、凝視。ガン見に入った。
>。。。。。。。
いささか、どうしていいものか困ってしまい、
「あげようかぁ〜?いいよ〜」と、外して差し出してしまった。
まだ買ったばかりで気に入っているのに。気が小さい私である。。
すると今度はもじもじと母、、、
>??????あ〜〜〜分かりづらい???
もういいや〜と思い「何?」とハッキリ聞くと、
「ちゃんとリボンのついた箱に入ったのが欲しい」と母
「・・・」返す言葉が無い
>なんだと〜〜?そうくるのか。。。(T_T)そ〜ですか
「了解」お誕生日にプレゼントする約束になってしまった。
そして何ともタイミング悪く、その後になって、やっとにぎりはやって来た。
大層大きなさらに乗って。
ところが★覗き込むと〜〜見た事も無いほどに、そのきぎりは小さい。
小さい。小さくて〜小指ほど=====
>ここはどこだ?! 東京か? いや〜〜〜田舎町の松戸だろう〜〜??
「こんな洒落たお寿司は初めてね」母。かなり嫌みを感じる。。。
「そそそうね」と取り乱す私(T_T)。。。
>もう凹×1000倍
「でも〜さすが極みにぎりね〜珍しいネタがいっぱい!ほら〜アワビが入っているね〜」と精一杯明るく振る舞うが、
「アワビは固いから」と拒否る母
>(T_T)
「おおおお、まぐろが3つよ〜」とまた一層明るく私。
「油が強いから〜私は1つで十分よ」
と母。
>(T_T)
結局〜極みのにぎりも3つしか食べなかった母だった。
(後は私がひたすらに食べたのは言うまでもありません。。。)
こうして、久々の里帰りと親孝行は、悲しくすぎて行きました。。
慣れない事はやらないに限る、心底思っていた。
でも、こんな落ちが待っていた。
会計に行くと
「¥5000でーす」と、レジの若いお兄ちゃんが言い放った。
「いいえ〜もっと食べているわよ、お会計ぜんぜん間違ってるわよ〜」と優しく私が返すと、
「いいえ、¥5000です」と一本調子のお兄ちゃん。
「だから〜違うから!」と口調を強めてみても、同じ問答が3〜4回続いた。
すると調理場からのプレッシャーを受けるかのようなお兄ちゃんは、小声で「そう言う店ですから」と、うなずいてみせるのだ。「はあ?!」
よーーーするに、これでいいから了解してと言う合図なんだ。
「そう、、、」ちょっと腑に落ちないけれど、言われるがままにお会計をすませ外に出た。
母は「きっと私たちの事を上客だと思ったのよ〜、また来てって事ね!」とあっけらかんと笑ってみせたが、私の気持ちを実は板長さんがくんでくれたんじゃないかと、密かに思った。
そうあって欲しいから。
そうでなくっちゃ〜あまりにも悲しいから。。。
>また私行くよ!
ある意味(T_T)忘れられないから。