
パン業界紙の編集者さんに「最近パン業界は元気がなくない?」と聞いたところ、「何言っているの〜そんな事ないわよ=」との返事がかえって来た。
確かにメディアは今もパンブームで、パンの特集を載せると、良く売れるのだと聞く。
でもなぁ、、、実際この業界にいる私は、なんだか温度差を感じている。
このところ有名店でも閉店して行く事が多く、店舗を多数展開していた店でも、新たにお店をオープンしたようでありながら、実は1店舗に絞り込んで、他の店を閉めて再結成させたりしているようだ。
開店時は華やかに宣伝が行なわれるけれど、なかなか閉店を大きな声で言うことはないからね、閉店には気がつかないのだ。
中でも私は「町の小さなパン屋」が、ほんの数年で店を閉めて消えて行く現実に胸が痛む。ZOPFのある松戸市でも、ここ数年新しく開業したパン屋の数より、閉店しているパン屋の数の方が上回っていると聞く。
そんな現実を聞くに連れ、ZOPFの先代(店長の父:パン職人暦60年現役)は、しみじみと「自分の時代は頑張れば喰っていけたのにな〜」と振り返る。「パンの善し悪し関わらず(!?笑)、一生懸命パンを作れば売れた時代だったよ。寝る間も惜しめば惜しんだだけの見返り(儲け)があるし、頑張るのが楽しかったよなあ」と、がむしゃらに働いた若い頃を懐かしむ。そして「厳しい時代になったんだな〜。せめて当らなくてもいいからさっ(とっても儲って有名になるとかと言う意味)、家族で喰っていけたらいいのに、それすら出来ない職業になってしまったら、パン屋はつまらないよなぁ?」、そうパン職人の将来を心配するのだ。
考えさせられる。
いわゆる町のどこにでもあった「パパママパン屋」=パパが職人でママが売り子のパン屋、昔はほとんどがこのスタイルだったようだが、今はあまり見かけなくなった。
それはなぜなんだろう?
私はこう考える。
お客様のニーズが、小さなパン屋ではまかない切れなくなったのではないだろうか?
パン職人1人で作れるパンの量は、残念ながら限界があるからね、朝から晩まで焼き続けても、たいした品数は出来ないのだ。そうなれば、そのくらいのパンの量やパンの種類じゃ、消費者はつまらないのである。
大型店や焼き立てを随時販売する店を知ってしまった今、よっぽど稀少価値の高いパンでもない限り、小さな店は「つまらない店」と評価されてしまうのではないだろうか?
地域に根付いた町のパン屋を目指すとも良く聞くフレーズだけれど、なかなか親しく付き合うと言うのは即席では出来ず、難しい時代になっているのかも知れない。
となると、独立したてのパン職人が(いつか店を大きくするのを夢みながらも)とりあえずは自分の力量にあった小さな店を開業しても、見向きもされない結果を招いてしまうと言うのだろうか?
悲し過ぎる。
かといって、いきなり大きい店を切り盛りするのは本当に難しいし、そんな資金がどこにあると言うのか。。。。
ZOPFも今だからこそ大所帯になったけれど、立ち上げた当初は、正スタッフは製造に1名だけだった。それが8年かかり、今に至った。
徐々にだったからこそ出来た事、それは間違いないと実感する。
ただパン作りが好きで、パンを焼いて暮らしたいと願うだけでは、やっていけないのだろう。商売は難しい。そして生きて行く事も難しい。
ますます学ぶ事は多いし、頑張らねばならない。
息切れし始た自分を叱咤激励しつつ、表向きはシャンと背筋を伸ばして(笑)、「そんな時代の中にいるんだよ」と私はスタッフに厳しく伝えて行かなければならと思う。